ワカメは発毛に関係がある?

「髪の毛にはワカメが良い」とは、昔からよく言われてきた事柄です。確かにワカメなのどの海藻類は、栄養分を豊富に含んだ食物ですし、人の体に対して非常に良い健康食品としての性質を持った食べ物だといえます。

ただその一方で、ワカメに限らず、特定の食べ物を食べたからといって、それが薄毛・脱毛の抑制や発毛の促進といった、毛髪環境に直接的な効果をもたらすことはありません。

発毛・育毛への効果があると直接認められたものは、我が国の場合、医薬品として認められたものだけです。また、医薬部外品は、直接的な効果とは限りませんが、医薬品に比べて緩やかな薬用効果を認められたものです。

ただ、ワカメなど、一般的な食べ物を食べることが、発毛・育毛の直接的な効果が無いとしても、より良い栄養を積極的に摂取することに、全く意味が無いわけではありません。

人体の生命活動はさまざまな作用を行っていますが、そのなかでも特に毛髪の生育に寄与する活動を挙げることができます。ワカメなど栄養素が豊富な食べ物は、こうした人間の体内活動を促進することで、毛髪環境の改善にも影響を及ぼす可能性があります。

今回は、毛髪の生育により良い生命活動を取り上げ、これに寄与する食べ物としてワカメの例を取り上げて説明していきます。

毛髪に良い生命活動とは?

人体は髪の毛に限らず、さまざまな組織が機能して生命を維持しています。口から摂取した食べ物に含まれる栄養素は、まずは生命の維持に必要性の高い作用から優先的に使われます。

これに対して、毛髪の生育というものは、さまざまな生命の維持活動のなかでは、相対的に優先度が高いとはいえません。栄養分のすべてが毛髪に使われないということはありませんが、身体全体の活動のなかで発毛・育毛が重視されるということもありません。

ただ、さまざまな生命活動のなかでも、特に毛髪環境に影響を与える作用というものは、いくつか考えられると思います。最もよく言われるのは、血行の改善(血流の促進)、ホルモンバランスの改善、ストレスフリーです。

このうち、頭皮に網目のように張り巡らされている毛細血管は、毛根の毛乳頭とつながっており、毛髪の生育に必要な栄養分や酸素を送り届ける役割があります。血行の改善は、毛髪環境にも発毛・育毛を促す効果が期待できます(→髪の毛の構造)。

また、男性型脱毛症(AGA)の原因は酵素の働きを受けたホルモンの変化であることがわかっていますし(→男性型脱毛症(AGA)を引き起こす原因は何か?)、出産後やピル(経口避妊薬)の服用中止によって起こる脱毛もホルモンバランスの変化が原因です(→出産後に髪の毛が抜けるのはなぜ?)。

ストレスに関しては、特に女性の薄毛・脱毛はさまざまな要因が関係していると考えられています(→女性の薄毛・脱毛症・FAGAを考える)。また、円形脱毛症の原因は自己免疫反応であり、ストレスは主な原因では無いのですが、免疫機能の異常をもたらす誘因の1つではあると考えられています(→円形脱毛症とは)。

こうした脱毛症の原因を考えていくことは、逆に言えば薄毛・脱毛を抑制し、健全な毛髪の成長サイクル(ヘアサイクル)を取り戻すことで、どうしたら発毛・育毛につながるかを考えることにもつながります。

そこで、毛髪環境の改善のためには、血の巡りを良くする血行の改善、ホルモンバランスを整える生活習慣の見直し、精神的なストレスを取り除くストレスフリーな生活、ということが挙げられます。

ワカメと食物繊維

ワカメは、五訂増補日本食品標準成分表によれば、乾燥状態で食物繊維を68.9g(水溶性食物繊維9.0g、不溶性食物繊維59.9g)含んでいます。これは、食物繊維が多いとされる海藻、穀物、豆類などのなかでも、特に多いほうだといえます。

そもそも食物繊維とは、人の消化酵素によって消化されない、つまり、人間が自力で消化することができない難消化性成分の総称です。

食物繊維は、炭水化物のうちの多糖類であることが多く、人間の消化器官の代わりに、大腸内に生息する腸内細菌が発酵を行います。この発酵は、食物繊維を人体が吸収しやすい物質に変換してくれる作用であり、人間は発酵後の物質を利用することができます。

つまり、食物繊維自体は栄養素ではなく、そのままの形で吸収されるのではありませんが、人間の場合に約3万種類、100~1000兆個が生きているといわれる腸内細菌の発酵のおかげで吸収しやすい物質に変換され、その多くがエネルギー源として吸収されます。

特によく知られているのは、食べ物によって摂取した食物繊維をもとに、腸内細菌はビタミンB群を作ってくれる活動です。ビタミンB群は、炭水化物をエネルギーに変えてくれたり、赤血球の形成に役立つ物質です。

その一方、食物繊維の摂取自体による効果としては、肥満防止、コレステロールの上昇抑制、血糖値の上昇抑制、抗酸化作用、便秘予防・排便促進、脂質異常症の予防、脂質代謝の調節のよる動脈硬化の予防、大腸癌の予防などが確認されています。

こうしたさまざまな食物繊維の効果に共通しているのは、安全で健康的な血液の状態を保ち、血流の流れの改善に寄与することや、代謝機能の調節に関わり肥満を防止することで、ホルモンバランスやストレスの低減にも役立つことです。

この食物繊維をとても多く含んだワカメは、トータルで身体の調整機能をサポートしてくれる健康的な食品だといえます。こうしたことから、正常な毛髪環境づくりにもつながる効果が期待されてるともいえます。

ワカメ自身が直接髪の毛を増やす効果があるとか、薄毛や脱毛をなくしてくれる効果があるといったことはありません。ただ、健全な毛髪環境を取り戻すのに必要な全身的な取り組みの一環として、身体の調整機能に役立つ食品であるということは言えると思います。