紫外線の頭皮への影響

紫外線は、頭皮への影響があります。紫外線は、太陽光の中に含まれる電磁波の1種です。紫外線は、波長が10~400nmの不可視光線(目に見えない電磁波)であり、英語で「ultraviolet」ということから、しばしば「UV」と略されることが一般的です。

紫外線は、皮膚のタンパク質の変性、皮膚の老化、日焼け、ビタミンDの生成、殺菌といった作用が確認されています。

紫外線は、近紫外線、遠紫外線、極端紫外線に分類されており、さらに近紫外線は、UVA、UVB、UVCに分類されています。これらの分類は波長によるものですが、それぞれが持つ特徴に違いが見られます。

遠紫外線は真空中で無ければ進行せず、通常は太陽光に含まれていても地表に到達しません。また、極端紫外線も、太陽光に含まれたものは人体への影響に関して、ほとんど問題になりません。

紫外線が人体や健康への影響に関係するのは、近紫外線(UVA、UVB、UVC)です。特に、地表に到達する紫外線の99%がUVAです。太陽光線は非常に大量の紫外線を発していますが、そのうち地表に到達する割合は、UVAでは5.6%、UVBでは0.5%です。

なお、UVCは強力な殺菌作用を持ち、生物を破壊する力が最も強い紫外線ですが、オゾン層を通過できないため、通常は地表に到達しません。ただし、オゾン層破壊による地表への到達によって、さまざまな生物や生態系への悪影響が心配されています。

紫外線が皮膚に大きな影響を及ぼすことは、よく知られています。そして頭皮も皮膚のひとつであり、紫外線の影響を受けることになります。ここでは、紫外線が皮膚や頭皮に与える影響を取り上げ、これに関して注意すべき点を説明します。

紫外線と日焼け

紫外線が頭皮を含む皮膚へ最も大きな影響を及ぼすのは、紫外線のなかでもUVAやUVBと呼ばれるものです。紫外線はタンパク質を変性させるため、皮膚のコラーゲンや弾力性を支える繊維にダメージを与え、皮膚の老化を促す作用があります。

(コラーゲンがいかに皮膚や毛髪にとって重要かについては、17型コラーゲンが白髪・脱毛を抑制するで説明しています)

特にUVAは、大気中で力を失ったり減少するといったことが少なく、UVBよりも深く皮膚の中に浸透します。また、UVBは秋冬や朝晩には減少するのですが、UVAはさほど変わることはありません。

UVAはUVBよりも波長が長いことから、皮膚に深く浸透し、弾性繊維を徐々に破壊します。一度破壊された弾性繊維は回復しないため、皮膚の加齢(老化)を促進させてしまいます。また、従来はUVBのみと思われていた皮膚がんの誘発を、UVAも持っていることが分かっています。

一方、UVBやUVCは、UVA以上にDNAへの異常を引き起こす可能性があり、皮膚がんの原因となる紫外線です。UVCはオゾン層によって地表に到達することはほとんど無いものの、UVBはいわゆる「日焼け」にも関与する紫外線です。

「日焼け」は、紫外線がメラニンの保護能力を超えている時に発生する症状であり、皮膚が赤い炎症を起こす急性症状のサンバーン(sunburn)と、メラニン色素が皮膚表面に沈着するサンタン(suntan)の2種類の症状に分かれます。

サンバーンを引き起こすのはUVB、サンタンを引き起こすのはUVAです。日焼けの症状に個人差があるのは、メラニンの成分量に個人差があるためです。これは人種間によっても違いが見られます。

サンバーンは、紫外線量がメラニン色素の防御反応を超えたときに、細胞組織が傷を受け、炎症反応が発生する急性の日焼け状態といえます。サンバーンはUVBが表皮を透過し、真皮乳頭体まで達しています。

サンタンは、これ以上の紫外線の皮膚組織への侵入を防ぎ、より深い皮膚組織へのダメージを軽減させようとする防御反応です。UVAによって茶色のメラニン色素が分泌され、皮膚の表面に沈着されます。

UVB(→サンバーン)は発赤や炎症を生じさせ、UVA(→サンタン)はシワやタルミの原因になります。市販の日焼け止め用品のうち、SPF値はUVBの遮断率を表し、PAはUVAの遮断に対する効果を表すものです。

紫外線とビタミンD

その一方、紫外線を受けることで、皮膚ではビタミンDが生成されます。ビタミンDは、血中のカルシウム濃度を高める作用がある物質です。紫外線がビタミンDを作ってくれることは、日焼けによるメリットといえます。

ビタミンDの欠乏は、骨軟化症(くる病)、骨の痛み、体重増加による骨折などの可能性があります。また、日照不足は冬型の季節性情動障害の可能性もあるため、特に高緯度地域の白人の方は、日光浴を好む傾向があります。

ただし、日本において日照不足によるビタミンDの欠乏症が起こることは、非常に稀です。日本では、わずかな紫外線と一般的な食生活を送ることで、ビタミンDは十分に生成されます。

2014年(平成26年)に独立行政法人・国立環境研究所が発表した、東京家政大学とのチームの研究によれば、日本国内で成人が健康な生活を送るのに必要なビタミンDを体内で生産するために必要な日光浴の時間に比べ、皮膚に有害な影響を及ぼし始める時間は、その約2~3倍です。

つまり、日本国内では、一般的な日常生活や食生活を送っている方は、ビタミンDが生成されるからといって、むやみやたらと必要以上に長時間に渡って紫外線を浴びる必要は無いということです。

むしろ長時間の紫外線の照射は、ビタミンDの生成というメリット以上に、皮膚組織にはダメージとなり、皮膚がんのリスクを高めるといったデメリットのほうが格段に高まるといえます。

紫外線と頭皮への影響

紫外線は、頭皮をはじめとする皮膚に対して、非常に強いダメージを与えます。タンパク質を変性させ、皮膚の老化を促す作用があることで、健全な毛髪の生育環境を阻害する可能性もあります。

頭皮を紫外線から守るには、帽子をかぶることが最も手軽に解決できる対応策です。UVカットの帽子やパーカについて、独立行政法人の国民生活センターでは、紫外線遮蔽率は96%以上でほぼ表示(97%)通りだったという商品テスト結果(受付番号:22059)を公表したことがあります(2010年12月公表)。

紫外線の影響は人種の間でも違いが見られますし、個人差も見られます。日本では、医師や研究者の多くが、医療目的(例えば乾癬や白斑などの治療に使われることがあります)以外に紫外線を浴びること、特に過度の日焼けには否定的だといえます。

一般的に、日常生活のなかで適度な日差しを浴びることは、体内時計をつかさどるメラトニンというホルモンの調整作用の促進につながり、正常な生体リズムを整える効果があります。

ただその一方で、必要以上に紫外線を浴びることは、皮膚組織の破壊を通じた皮膚がんのリスクを高めますし、頭皮も皮膚の一種である以上、健全な毛髪の成長を阻害する悪影響の懸念が生じます。

こうしたことから、日光浴や屋外での活動の際は、毛髪ケアという観点からも、なるべく長時間、太陽の光を必要以上に直接受けないようにする必要があるといえます。