毛髪に優しい睡眠・熟睡の工夫

睡眠を十分に取ることで、発毛・育毛への効果が期待できるメカニズムについては、成長ホルモンの発毛・育毛効果と睡眠で詳しく説明しました。

この記事でも触れた通り、睡眠は成長ホルモンの分泌を増やし、この成長ホルモンは毛根に働きかけるIGF-1という物質の生成を刺激することで髪の毛を増やす活動への波及効果が分かっています。

もちろん、寝れば寝るほど良いというものではなく、例えば同記事でも説明したように、過度の睡眠も睡眠不足も同じように、ホルモンバランスを崩したり体調を崩す原因となります。一般的な成人の場合、7~8時間が適切です。

適度な睡眠時間が得られないことは、ホルモンの乱れを生じさせたり、頭皮の血流を悪化させるなど、髪の毛の成長には良くない影響をもたらします。不規則な睡眠も、薄毛や脱毛につながります。

もちろん、睡眠は睡眠時間や規則的な時間帯に加え、より良質で十分な睡眠、いわゆる「熟睡」であることが望ましいといえます。ここでは、熟睡を得るための工夫について、具体的に取り上げていきます。

概日リズム(体内時計)とは

まず、より良い睡眠のためには、睡眠時間を確保することに加えて、毎日一定の時間帯に寝ることが重要です。これは、睡眠のパターンを一定にすることで、体内時計を調整させ、心身の調整を安定的に機能させることにつながります。

動物、植物、菌類、藻類など、地球上のほとんどの生物は、生まれながらにして時間を測定する仕組みを備えており、これを「生物時計」といいます。生物時計の周期には、鳥の渡り、魚の回遊、植物の開花など、年単位や季節単位の例もあります。

生物時計のなかでも特に、生物の生理現象が24時間周期で変動する仕組みのことを、概日リズム(体内時計)といいます。この体内時計は、生物自らが形成しているものですが、光、温度、湿度、食事、睡眠などの刺激を受けて修正されることが分かっています。

人間をはじめとする哺乳類の場合、体内時計を統率する時計中枢は、視交叉上核(しこうさじょうかく)と呼ばれる、脳の視床下部という部分のなかの非常に小さな領域がつかさどっています。

視交叉上核には約2万個の神経細胞があり、睡眠、覚醒、活動、注意力、血圧、体温、ホルモン分泌、免疫機能、消化機能など、様々な生理機能のリズムを、約24時間を1つの周期(単位)として作り出しています。

特にこの周期は、光の強さや波長、一定の温度によって調整されることが分かっています。また、約24時間の周期に沿っていない状況に置かれても、乱されることが分かっています。

こうした例としては、時差ボケや、不規則な生活による睡眠障害が挙げられます。体内時計を乱すことは、短期的な影響だけでなく、長期的にも身体の健康状態への悪影響が指摘されています。

睡眠の時間帯も一定に

毎日の生活のなかで、睡眠時間を一定時間確保するだけでなく、寝る時間帯を安定的に決めることは、体内時計の安定化を通じた全身の健康状態の維持につながります。

特に、体内時計は自然の光の明暗の影響を受けるものですし、日の出から日暮れまでの日中は太陽光を適度に浴びる時間を確保しながら活発的な生活を送り、日暮れから日の出までは激しい運動を行わず穏やかに過ごして十分な睡眠を取るリズムを維持しましょう。

なお、メラトニンというホルモンの分泌が、体内時計の調整に貢献している点については、髪の毛の状態は体調のサインで説明しています。ここでも、適切な睡眠と太陽光を浴びることの効果について説明しています。

ちなみに、人間は夜更かしした翌日に長時間睡眠をとって寝不足を解消することができますが、長時間睡眠した翌日に夜更かしするといった「寝貯め」はできないと考えられています。

また、夜更かしした翌日の長時間睡眠=「まとめ寝」も、寝不足は解消できますが、長時間睡眠によって睡眠バランスや体のリズムを崩すため、これも好ましいものではありません。やはり毎日、一定の時間帯に一定の睡眠時間を確保することが望ましいといえます。

入浴、運動、食事

もうひとつ、体内時計との関係で指摘しておきたいのは、寝る直前に入浴や運動を行うことは避けるべきだということです。入浴や運動は体温の上昇や興奮をもたらし、その状態がしばらく続きます。

良質な熟睡を得るためには、睡眠の数時間前には入浴や運動を済ませておくほうが、体内時計との関係で概日リズムを整えることができます。入浴に関しては睡眠の2~3時間前、運動についても午後から夕方にかけての時間帯が望ましいといえます。

その一方、睡眠と同様に食事も、体内時計に大きな影響を及ぼす外的な刺激となります。毎日3食、同じような時間帯にしっかり摂ることが、身体全体のリズムを整えることにつながります。

食生活に関して言えば、寝る前にカフェイン、アルコール、ニコチンは、やはり人体を興奮させる作用があるため、なるべく避けたほうが良い物質です。コーヒーやコーラ、酒類、タバコの摂取は、就寝直前は控えるようにしましょう。

ここまで見てきた通り、不規則な睡眠や不十分な睡眠は、薄毛や脱毛を引き起こす原因となります。十分に良質な睡眠=熟睡を得ることで、全身から体調を整え、髪の毛においても成長を促す方向にサポートすることが可能となります。