髪の多い少ないは遺伝的に決まっている

髪の多さ・少なさは、実は遺伝的に決まっています。このことは、単に毛髪の本数だけでなく、髪の太さ・細さという性質も影響しています。そして、髪のボリュームが遺伝的に決まっているということは、頭皮環境を整えることの重要性につながります。

ここでは、髪の毛の本数(多い・少ない)と太さ(太い・細い)には遺伝的な影響があって個人差があることや、こうしたボリュームと髪が抜けにくい・抜けやすい性質は別物であること、これらを踏まえた頭髪ケアの意義について詳しく説明します。

髪の毛の本数(多い・少ない)を考える

髪の毛の本数に関しては、人種によって違いがあり、白人や黒人は頭皮1平方cm当たりおよそ400本前後、黄色人種は1平方cm当たり250本前後生えています。この密集度は、頭頂部は多め、側頭部や後頭部は少なめの傾向があります。

日本人は黄色人種ですが、頭髪に生えている毛は10万本と言われます。これに対して白人や黒人は15万本以上ということになりますが、実際には黒髪、金髪、茶髪、赤毛といった髪の色によっても違いがあると言われます。

これは一般的な平均値です。日本人でも12~15万本という方がおられますし、6~8万本という方もおられます。頭髪の数には個人差があり、これは遺伝的な要素によってかなりの程度まで決定されています。

つまり、生まれたときから、そのひとの髪の毛の数が多くなるのか、少なくなるのかは、すでに決まっているということになります。遺伝的に決まった頭髪の総数を変化させることはできません。

このことはむしろ、正しい毛髪の成長サイクル(ヘアサイクル)を取り戻したり維持するための頭皮ケアや、毛髪が生育しやすい環境をサポートする重要性につながっています。この点を見る前に、髪のボリュームを決定するもうひとつの要素を見ていきましょう。

髪の毛の太さ(太い・細い)を考える

髪の毛の太さに関しては、頭髪は「無性毛」(むせいもう)という性質を持ちます。体毛には、男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受ける性毛(せいもう)と、男性ホルモンの影響を受けにくい無性毛があります。

男性ホルモンは女性も少量ですが持っていますし、男性も女性ホルモンを持っています。ここでは男性ホルモンの影響を取り上げていますが、男性ホルモンとは、体毛の増加、筋肉の増強、性欲の向上、男性型脱毛症などを働きかける体内の物質です。

この男性ホルモンによる働きによって増加するのが「性毛」です。性毛には、男女両方への作用で変化する両性毛(腋毛、陰毛など)と、男性だけの作用で変化する男性毛(髭、胸毛、両性毛に該当しない陰毛の一部、男性型脱毛症など)があります。

その一方、頭髪は「無性毛」、つまり男性ホルモンの影響をほとんど受けにくい体毛です。無性毛には頭髪のほか、眉毛、まつげ、四肢の毛が挙げられます。

なお、頭髪が無性毛といっても、例外があります。それが男性型脱毛症(AGA)です。AGAは、5α-リダクターゼという酵素が、テストステロンという男性ホルモンを、より強い性質を持ったジヒドロテストテロン(DHT)という物質に変化させることで生じる脱毛症です。

このため、両性毛に該当する男性型脱毛症という例外的なケースを除けば、頭髪は男性ホルモンだけで増減が起きたり、性質が変わるといったことは起こりにくい体毛といえます。

しかし、人間の一生のうち、思春期だけは、髪のくせが変わるといったことが起こります。これは人種の違いなどを問わず、確認されています。もちろん、どう変わるかは個人差が大きく、全く変わらないという方もおられます。

この原因については、厳密に解明されてはいませんが、思春期にだけ見られるホルモンバランスの変化だとする説が有力視されています。思春期を過ぎてから、髪の毛が太くなった・細くなった、あるいは、ストレートになった・カールがついたという変化を感じた方も少なくありません。

(なお、ホルモンバランスの変化のほかには、思春期に伴う筋肉や骨格の変化が毛穴の形を変化させ、毛髪の性質にも影響を与えているという説もあります。どちらにせよ、ホルモンの影響は少なくないかと思われます。)

こうした髪質の変化は、各個人が持っているホルモンバランスの変化に伴うものと思われていて、どう変わるか(あるいは変わらないか)は、それぞれの個体が持つ要素に左右されているといえます。

ここまで見てくると、遺伝的に決定される毛髪の総数や、体内物質のバランスによって左右される髪の太さを、人為的に変えることはできないことがわかります。しかし、そのことと、毛髪が生育しやすい環境を整えることとは、全く別に考えるべき事柄だといえます。

髪の毛の性質にも個人差がある

ここまで見てきたとおり、髪の本数は遺伝的な影響が大きいことがわかっており、髪の太さも思春期におけるホルモンバランスの変化が影響を及ぼすと考えられています。また、見た目の印象を決める髪のボリューム感は、髪の本数に加えて、髪の太さも大きく反映されます。

頭髪の一般的な直径は0.05mm~0.15mmですが、個人差や人種差が大きく見られます。毛髪の断面を見ても、一般的に黄色人種では円形ですが白人では楕円に近く、黒人は更に細長い扁平な断面の方も多く見られます。

髪の断面の形状は髪質にも影響を与えます。断面が円形の黄色人種はストレートヘアの方が多く、楕円や扁平な断面の白人や黒人の方はカールしやすく、自然に波打った髪・巻き毛・縮れ毛といった方が多く見られます。

このような毛髪の形状やくせ毛が生じる原因は、毛穴や毛根の形状に違いがあるためです。そもそも頭髪の根源となる部分が違うのですから、目に見える髪の毛の性質に個人差が出るのは、当然といえば当然かと思います。

個人差があるからこそ発毛・育毛を行おう

ここまで見てきたさまざまな違いが生まれつき頭髪にあるからといって、発毛や育毛に関するケアが無駄ということは決してありません。むしろ、毛髪の性質に個人差があるからこそ、頭皮環境を整え、積極的な毛髪ケアに取り組む重要性があるといえます。

そもそも、髪の毛の本数や太さと、髪の抜けやすさ・生育のしやすさには、何の関係もありません。例えば、太い髪が多いからといって、その髪が抜けにくいとは限りませんし、髪が先細ってきたからといって、髪が生え変わることを諦める必要はありません。

つまり、もともと髪の毛が細かったり、現在ある髪の毛の総本数が少ないからといって、頭髪ケアを諦める必要は無いのです。重要なことは、いま自分が置かれた毛髪の性質に失望することではなく、毛髪の成長サイクル(ヘアサイクル)のサポートを通じて、髪が抜けにくく、生えやすい環境を自ら作っていくことです。

正しい頭髪ケアを行って、毛乳頭や毛母細胞などの成長因子が健全なヘアサイクルを取り戻せば、髪の毛は成長期→退行期(移行期)→休止期という成長サイクルを通じて、抜け落ちた髪も生え変わり、毛髪の総本数を維持することができます。

もし何もせず、頭髪がヘアサイクルを取り戻すことが出来ないままなら、毛髪が抜け落ちるばかりで、いま以上の悪化を招きかねません。髪の本数や太さに関係なく、毛髪の生育を促すことで、脱毛を食い止め、新たな発毛・育毛への環境を整えることが可能となります。

これとは逆に、髪がフサフサ(総本数が多い)だったり、太い髪があるからと油断していては、頭皮環境の悪化を通じて、抜けやすい髪に変化させ、新たな毛髪の生育を阻害することで、薄毛や抜け毛、脱毛症を進行させることにもつながります。

ここまで何度も触れたとおり、髪が多いことや太いことは、髪の抜けやすさ、生え変わりやすさとは何の関係もありません。ボリュームのある髪がどんどん無くなっていくということは、決して珍しい現象ではありません。

どのような髪質の方であれ、どれだけ髪があったとしても、それは過去のヘアサイクルの結果であり、これから先の頭皮環境の変化によって、良くもなり、悪くもなる可能性があります。健康的な頭皮環境の整備を通じて、自然なヘアサイクルをサポートする取り組みが、どの方にも求められているといえます。