ミネラルと毛髪の関係を考える

ミネラルとは、必須元素のうち、水素、炭素、窒素、酸素を除いたものを指します。ミネラルは、無機質、灰分(かいぶん)ともいいます。ミネラルは、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミンと並ぶ五大栄養素の1つです。

特にミネラルの中でも、亜鉛、鉄、銅、マンガン、マグネシウムは、髪の毛の成長にも関係してくるミネラルです。ここでは、これらのミネラルと毛髪の関係を詳しく見ていきます。

亜鉛

亜鉛は、ミネラルのなかでも特に毛髪との関係で研究されることが多い物質です。亜鉛を多く含む食品としては、生ガキ、豚レバーが挙げられます。

亜鉛によって、テストステロンからDHT(ジヒドロテストステロン)への変換が抑制されたとする実験結果が報告されています。また、アゼライン酸と亜鉛の組み合わせにより、5αリダクターゼという酵素が90%抑制されたとの実験結果もあります。

(男性型脱毛症(AGA)の原因は、男性ホルモンのテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の刺激を受けて、DHT(ジヒドロテストステロン)に変化することだと分かっています。この点について詳しく知りたい方は、男性型脱毛症(AGA)を引き起こす原因は何か?を参考になさってください)

ただし、どちらの場合も、試験管レベルの実験結果です。また、これらとは逆に、亜鉛を内服した場合は、DHTの上昇を示唆する実験結果もあります。

このため、亜鉛が薄毛の抑制に役立つのか、逆に薄毛を促してしまうのかについては結果が分かれており、確定的な結論が出るためには、将来の研究成果が期待されているのが現状だといえます。

ただし、亜鉛は人体に欠かせない必須物質であることは間違いありません。特に頭髪、皮膚、爪、骨、歯、前立腺に含まれており、細胞分裂が行われる際の酵素の活性に関わる役割が知られています。

その一方、厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」によれば、日本人の1日の亜鉛摂取量の上限は30mgです。亜鉛の過剰な摂取は、胃障害、めまい、吐き気などの急性亜鉛中毒や、銅や鉄の吸収阻害による銅欠乏症、鉄欠乏症の可能性があります。

亜鉛は欠乏してもいけません。亜鉛の欠乏症は、皮膚炎、貧血、味覚障害、無月経、創傷治癒の遅延などが分かっています。しかし、一般的な食生活のなかで亜鉛不足になることは考えにくく、サプリメントで補給する場合などの過剰摂取に注意すべきでしょう。

鉄の役割で最も知られているのは、酸素の運搬のサポートです。血液中に存在して酸素と結びつき、身体中に酸素を運ぶ役割を持つヘモグロビンは、鉄を含有したタンパク質であり、鉄のイオンを利用して酸素を運んでいます。

これはもちろん、毛細血管を通じて毛髪を含む身体の隅々に及ぶ効果です。また、酸素はミオグロビンというタンパク質の構成原子でもあり、これは骨格筋細胞の酸素の貯蔵に関わります。

このように、鉄はさまざまなタンパク質の構成原子として欠かせない必須元素です。ただし人間は、粘膜や粘液以外に鉄を排出する効率的な仕組みを持ちません。鉄分の過剰摂取は、タンパク質を構成しない自由な鉄原子が生じさせ、鉄中毒を引き起こします。

この鉄原子が発生させる活性酸素は、細胞のタンパク質やDNAを損傷させ、各臓器を攻撃してしまいます。その結果、脂肪肝、肝炎から肝臓がん、糖尿病から膵臓がん、心不全などをもたらす危険性もあります。

他方で、鉄分の欠乏症としては、鉄欠乏性貧血が知られています。鉄分不足は、レバー、ホウレンソウ、ひじき、海苔、ゴマ、パセリ、アサリ、シジミなど鉄分を多く含む食品を摂取することで改善されます。

一般的な食生活で鉄分が欠乏することはめったになく、サプリメントで鉄分補給を行うとする場合は、よほどの欠乏症でない限り、医師に相談することをおすすめします。

銅、マンガン

銅はヘモグロビンそのものには存在しない元素ですが、ヘモグロビンが作られる過程では不可欠な元素であることが分かっています。また、銅タンパク質(銅イオンを含むタンパク質)は、酸素の運搬やさまざまな生体活動の伝達に関わっています。

銅を多く含む食品としては、カキ、ココア、黒コショウ、ロブスター、ナッツやヒマワリの種、グリーンオリーブ、アボカドが挙げられます。銅も欠乏症としては貧血、骨の異常、成長障害などがあり、過剰摂取は肝硬変や銅の蓄積を伴うウィルソン病などを引き起こします。

マンガンは骨の形成や代謝に関係し、消化などを助ける働きがあります。マンガンは日本茶(玉露)、干しエビ、しそ、生姜などに多く含まれます。マンガンは、上水道水には多すぎて除去する場合があるなど、普通に生活していて不足することはまずありえない物質です。

マグネシウム

マグネシウムは、骨や歯の形成、タンパク質の合成、エネルギー代謝に関する生体機能に必須な元素です。マグネシウムの欠乏は骨粗鬆症、虚血性心疾患、糖尿病などの原因のひとつと考えられています。

マグネシウムの栄養素としての働きや生体内の作用については、いまだに重要な面に関して不明な点が多く、非常に幅広い研究が行われています。また、他のミネラル(リンやカルシウムなど)との摂取バランスを適切にしなければ、尿路結石などの原因になりうることがわかっています。

マグネシウムは豆類や藻類、種実類や魚介類などに多く含まれます。2015年の「日本人の食事摂取基準」によると、成人におけるマグネシウムの推奨摂取量は約320~370 mg/日、サプリメントなどによる通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量は約350 mg/日です。

その一方、平成22年(2010年)国民健康・栄養調査によれば、日本人成人(30~49歳男性)の推定摂取量は240~244mg/日とされ、WHO推奨量である420mg/日より不足しています。

ミネラルと毛髪のまとめ

人間は「必須元素」という、生命維持のため摂取することが必要な元素があります。ミネラルとは、この必須元素のうち、水素、炭素、窒素、酸素を除いたものを指します。

日本では、13元素(亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素、リン)が、健康増進法に基づく食事摂取基準の対象として厚生労働省により定められています。

人間はミネラルを体内で作ることができません。このため、すべてのミネラルは適度な量を摂る事が良いのですが、欠乏症だけでなく過剰摂取も病気の原因となります。ミネラルの望ましい摂取量は、性別や成長段階によって異なり、国によっても定められた基準が異なります。

ミネラルのなかでも、今回取り上げた亜鉛、鉄、銅、マンガン、マグネシウムは、特に毛髪の成長との関わりで取り上げられることの多い栄養分です。ミネラルは髪の毛の成分そのものになるわけではありませんが、細胞分裂の活性、酸素の運搬、代謝の促進を通じて、全身的な生体活動のサポートから毛髪にも関与する物質といえます。