ロングヘア→栄養不足?

ロングヘアが栄養不足を招くのか?という疑問を抱く方も少なくありません。確かに、髪を長く伸ばし続けると、枝毛が目立ってきますし、ブラシに引っかかりやすくなったり、抜け毛が目立つ印象を持ちます。

しかし、長い髪だからといって栄養が十分に行き渡ってないということはありません。髪の毛の長い・短いという違い自体は、毛髪の生育環境の違いを現すものではありません。

今回は、ロングヘアだからといって栄養不足では無い点について、髪の毛の構造と枝毛を取り上げながら、詳しく説明していきます。これをよく知るために、まずは髪の毛の構造をおさらいしておきましょう。

髪の毛が伸びるのは毛根のおかげ

髪の毛は、毛穴を境にして、そこから上の目に見えている「毛幹」部分と、そこから下の皮膚下部にある目に見えない「毛根」部分があります。いわゆる「髪の毛」「毛髪」という場合、当然ながら目に見えている毛幹が該当します。

髪の毛が作られたり、髪の毛が長く伸びていくのは、目に見えない毛根(部)の働きのおかげです。毛根は毛包という部分に囲まれており、毛包は毛根を構成する部分を包み込み、発毛を促す以外に、皮膚呼吸、皮脂の分泌、発汗作用に関わります。

毛包の上部には、いわゆる「鳥肌が立つ」役割で知られる立毛筋とバルジという領域があります。この領域には、毛包幹細胞と色素幹細胞と呼ばれる2種類の幹細胞があります。

毛包幹細胞は毛髪のもとになる細胞を生み出し、色素幹細胞は黒髪のもとになる色素細胞を生み出す役割があります。2つの幹細胞は、毛包全体に新しい細胞をどんどん供給し、表皮が傷ついたときの修復機能を持っていることも知られています。

実際に毛髪を生成させ、髪の毛を長く伸ばすのは毛包に囲まれた毛根です。毛根のうち毛乳頭は、頭皮に網目のように張り巡らされている毛細血管とつながっています。毛細血管は栄養分や酸素などを毛乳頭に運搬し、発毛を促進します。

毛乳頭は、毛細血管から受け取った栄養分などを毛母細胞に受け渡すことで、発毛を促します。毛母細胞は髪の毛のもととなる細胞であり、これが細胞分裂を繰り返すことで、毛髪が生成され、髪の毛がどんどん伸びていきます。

毛幹は角化細胞

髪の毛のうち、毛穴の上から出て、目に見えている部分の毛幹がいわゆる「髪の毛」「毛髪」です。髪の毛の主成分はケラチンと呼ばれる硬いタンパク質ですが、毛幹はこれが角質化された状態です。

「角質化」とは、表皮細胞が細胞分裂をやめて死滅した状態のあと、硬く強靭な集合体を形成する現象のことです。人間の髪の毛(毛幹)やツメのほか、鳥類やカメなどのくちばし、サイの角、爬虫類や魚類などのウロコなどの例が挙げられます。

ちなみに、ケラチン(keratin)とはもともと「角の物質」を意味し、「角質」(かくしつ)とはケラチンの日本語訳です。ただし、実際のケラチンは、角質化しない上皮組織にも含まれて細胞骨格として機能する場合もあります。

このため、「角質」とはケラチンの別称です。しかし日本では、角質化していない組織におけるケラチンを「角質」と言うことは、ほとんど皆無に近いといえます。

人間の毛幹部分は、ケラチンが角質化しています。これは、細胞が細胞分裂をやめて死滅した上で、いわゆる「髪の毛」と呼ばれる頑丈な集合体を形成した状態です。

毛幹と毛根へのケアには違いがある

毛幹は、細胞としては死んでいる状態です。細胞分裂をやめて寿命を終え、角質化という形で髪の毛を形成している状態といえます。その一方、髪の毛が生成され、髪の毛が伸びているのは、さかんに細胞分裂を繰り返す毛根部分のおかげです。

このため、毛穴から伸びている毛幹部分がいくら長くても、あるいは、ロングヘアで枝毛が目立つようになっても、そのことと、毛髪に栄養が行き渡っているかどうかは、直接的な関係がありません。

毛幹は細胞が死滅した状態ですから、自分自身に修復機能がありません。このため、ロングヘアの方ほど、枝毛などが目立つ傾向があると思います。髪が長いからより多くの栄養分が必要だとか、栄養分が髪に十分届いてないといったわけではありません。

むしろ毛幹部分は、自分自身に修復機能が無いだけに、ロングヘアだろうがショートカットだろうが、髪の長い・短いに関係なく、毛髪へのケアが必要だといえます。この場合の毛髪ケアとは、毛幹を対象にしたシャンプーやリンス、コンディショナーなどの使用です。

目に見える部分の髪の毛は、細胞が死滅して角質化という変化で硬い髪を形成している状態です。自力で補修を行う機能が無い部分であり、日常のなかでシャンプーやリンスなど洗浄作用や保湿作用があるものを使ったケアを行う必要があります。

その一方、育毛剤や薄毛治療は、毛根へのケアとなります。髪の毛のもとになる細胞を生成し、それが細胞分裂を繰り返すことで毛髪が伸びていくのですから、薄毛・脱毛を抑制し、新たな毛の成長を促すことは、毛根部へのケアといえます。