ケラチンに必要な食品とは

髪の毛の主成分はケラチンというタンパク質で、このタンパク質は必須アミノ酸を含むさまざまなアミノ酸で構成されています。今回は、このアミノ酸をバランス良く摂取する必要性や、特に多く含んだ食品を取り上げます。

ケラチンと必須アミノ酸

髪の毛を構成する大部分の物質はケラチンというタンパク質です。髪の毛を乾燥させた場合の重量ベースでは、ケラチンが90%以上を占めています。

タンパク質とはアミノ酸が鎖状に多数結合した物質の総称であり、ケラチンもタンパク質ですから、さまざまなアミノ酸が結びついて出来た物質です。

人間は、食べ物として摂取したタンパク質をそのまま使うことはありません。摂取したタンパク質は胃や十二指腸の働きでアミノ酸に分解され、肝臓でタンパク質に再合成されます。

このため、ケラチンというタンパク質を摂取したからといって、それがそのまま100%毛髪のために使われるとは限りませんし、その逆に、さまざまなタンパク質が分解された結果、ケラチンが合成されることがあります。

ところで、アミノ酸のうち、動物が自分で十分な量を合成することが出来ず、栄養分として摂取しなければならないものがあります。これを「必須アミノ酸」と言い、人間の場合は一般的に9種類のアミノ酸を指しています。

人間の必須アミノ酸は、トリプトファン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンです。これらは、乳幼児でも大人でも必要であり、完全必須アミノ酸とも言われます。

これら必須アミノ酸はすべて、ケラチンを構成する物質です。含有量は物質によって異なるものの、どれが欠けてもケラチンを作られることはありません。

ちなみに、アルギニン、システイン、チロシンは成人では非必須アミノ酸ですが、乳幼児期では、早い成長に比べて体内での合成量が充分でなく不足しやすいため、準必須アミノ酸と呼ばれます。

桶理論とアミノ酸スコア

必須アミノ酸をバランスよく摂取する必要性に関しては、「アミノ酸の桶理論」で説明することができます。桶というものは、丸い底板の周りに、縦長の桶板を何枚もくっつけて丸く立てて囲む構造ですが、1枚でも短い長さであれば、そこから水があふれてしまいます。

これと同じように、必須アミノ酸は、摂取した全体量がいくら多くても、そのうち最も摂取量が少ない必須アミノ酸に合わせたぶんしか有効利用されず、タンパク質の合成もそのぶんしか行われないということです。

つまり、特定のアミノ酸をどれだけたくさん摂り入れたところで、一番少ない摂取量のアミノ酸にあわせたぶんしか体内で活用されないということになります。このため、どのアミノ酸が良いとかいうことではなく、どの種類のアミノ酸もまんべんなく摂取する必要があるということになります。

その一方、「アミノ酸スコア」といって、食品ごとに必須アミノ酸のバランスの度合いをスコア化した指標があります。古くは、1957年に国連のFAO(食糧農業機関)がたんぱく質必要量の国際的基準として最初に発表した「プロテインスコア」があります。

ただし、プロテインスコアは卵や牛乳のアミノ酸組成から導かれており、人体のアミノ酸必要量に基づいていないため、のちに「アミノ酸スコア」に改められました。

1973年に国連のWHO(世界保健機関)とFAOが発表したアミノ酸スコアは、我が国の『日本食品標準成分表』の四訂で採用され、1985年にWHO/FAO/UNU(国連大学)が発表したアミノ酸スコアは 『日本食品標準成分表』の五訂で採用されています。

現在では、1989年にFAO/WHO合同専門家会議で1985年版のスコアが妥当であるとされたため、日本でも1985年版のアミノ酸スコアが幅広く用いられています。ちなみに、アメリカのFDAでは、これに消化吸収率を考慮したPDCAASという指標が採用されています。

毛髪になる食品とは

ところで、毛髪の大部分を占めるケラチンもタンパク質の1つであり、さまざまなアミノ酸で構成される物質です。

ケラチンを構成するアミノ酸については、日本パーマネントウェーブ液工業組合の資料によれば、シスチン、グルタミン酸、アルギニン、トレオニン(スレオニン)、ロイシン、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、リシン(リジン)など18種類のアミノ酸で構成されています。

(ちなみに、日本パーマネントウェーブ液工業組合とは、パーマ剤の原料、製造、販売にかんする会社の業界団体です。花王、資生堂系列の資生堂プロフェッショナル、ホーユーなどが会員企業に名を連ねています)

このうち、シスチンやグルタミン酸はそれぞれケラチンの13~18%を占める重要なアミノ酸です。また9種類の必須アミノ酸もすべてケラチンの構成成分ですが、スレオニン、ロイシン、バリンが5~7%なのに対し、メチオニン、ヒスチジン、トリプトファンは1%未満などその構成比には違いがあります。

このように、髪の毛を作るもととなる物質の多くはシスチンやグルタミン酸ですが、その一方で必須アミノ酸もすべて必要であり、アミノ酸スコアが高い食品を積極的に摂取する必要があります。

アミノ酸スコアが100でシスチンを多く含む食品には、卵、鶏レバー、牛乳が挙げられます。また、グルタミン酸を多く含む食品には、アミノ酸スコアが80以上の昆布、70以上のしいたけが挙げられます。

また、シスチンもグルタミン酸も多く含み、アミノ酸スコアが比較的高い食品としては、80以上の大豆が挙げられます。

なお、アミノ酸スコアは食品単体の数値ですが、欠けたアミノ酸を補い合うことで、良好なたんぱく質の摂取になることが分かっています。特に豆類はコメ、とうもろこし、パン(小麦)と合わせて食べると、非常にバランスの良い摂取となります。

必須アミノ酸を摂取することは、人体が自分では作れないアミノ酸を摂取して、さまざまなタンパク質を合成することにつながります。特に毛髪の主成分であるケラチンの構成アミノ酸を摂ることは、髪の毛の原料を体内に配給することにつながります。

もちろん、毛髪の健全な生育のためには、単に髪の毛の原料を摂るだけでなく、その毛髪の作用を促す物質や、発毛・育毛のエネルギー源して使われる物質も、栄養源として摂取することが重要です。