人工毛植毛はおすすめできない

人工毛植毛とは、人為的に製造された人工毛を頭皮に植え込んでいく植毛法です。植毛には、「人工毛植毛」のほか、自分の毛を毛根ごと薄毛箇所に移植する「自毛植毛」という2種類の方法があります。

このうち人工毛植毛は、合成樹脂(主に石油を原料として化学的に製造される高分子化合物)で作られた人工の毛髪を植えていく植毛法です。なお、日本では植毛は医療行為であり、人工毛植毛であれ、自毛植毛であれ、医師が医療機関で行うものと法律で定められています。

人工毛植毛で使われる人工毛の代表的な素材には、略称のPETがペットボトルの名称の由来ともなったポリエチレンテレフタラート(ポリエチレンテレフタレートともいいます)や、PBT繊維で知られるポリブチレンテレフタラート(ポリブチレンテレフタレート)が挙げられます。

これらはどちらもポリエステルに分類される合成樹脂です。その他にも、ナイロンを使った人工毛が植毛に使われることもあります。合成樹脂はさまざまな医療現場で活用されており、一般的に安全性は高い素材といえます。

ただし、人工毛植毛は、アメリカでは法律で禁止されており、日本でも評価の低い方法とされています。ここでは、この点について詳しく取り上げていきます。

人工毛植毛のメリット・デメリット

人工毛植毛の最大のメリットは、髪の毛を好きなだけ増やせるという点です。自毛植毛のように限りがあるわけではありません。また、黒髪から白髪まで、さまざまな色のバリエーションを選ぶこともできます。

これに加え、もともとの髪と調和するように人工毛の長さを自由に作ったり、ヘアスタイルを好きなようにチェンジすることもできます。確実に髪が増やせる即効性や、カツラのような不自然さが無いこともメリットといえます。

ただし、アメリカやカナダでは、人工毛植毛は法律で禁止されています。また、日本でも、日本皮膚科学会の「男性型脱毛症の診療ガイドライン」において、人工毛植毛は最低ランクのDランク(行わないように勧められる)と位置づけられています。

人工毛植毛で最も懸念されるデメリットは、「拒絶反応」です。人体は、自分の体の一部とそうでは無いものを区別し、そうでは無いものを「異物」と認識して防御反応が働き、異物を体の外に出そうと作用する「免疫システム」を持っています。

植毛された人工毛に関しても、人体は異物として認識し、免疫反応を通じて体外に出そうとする拒絶反応が働きます。このため、人工毛は非常に抜けやすく、何度も繰り返し再手術を行う必要が生じます。

免疫システムを通じた拒絶反応の結果、深刻なただれや痛みを伴う化膿や炎症を起こすといったことがあります。免疫反応が強く出る方にとっては、アレルギー症状を引き起こすリスクもあります。

人工毛は抜けやすいため、頭皮の奥まで差し込み、しっかりと固定されます。この人工毛が切れることがあると、頭皮のなかに根元が残るという問題も生じます。人工毛植毛は、根元の違和感や突き刺した傷跡が残りやすく、そこから細菌感染する可能性があります。

人工毛を植え込んだ周囲には、突き刺した傷口の隙間ができます。その隙間には雑菌が入りやすく、細菌感染による感染症リスクがありますし、場合によっては重症をもたらす可能性もあります。

自毛は日々少しづつ伸びが変化することで、根元の残留物(皮脂や老廃物など)を自然に押し出しています。その一方、当然ながら人工毛は成長しないため、移植部分は汚れが溜まりやすく、細菌が繁殖しやすい環境となります。

人工毛植毛で植え込んだ箇所は、人工毛を突き刺した傷口の隙間ばかりといえますし、細菌の繁殖による感染症と、拒絶反応による化膿・炎症・アレルギー症状が起きるリスクが高いといえます。

人工毛植毛はリスクが高い

人工毛植毛はとてもリスクが高く、おすすめできない治療法です。アメリカでは、医療品や食品の規制を責務とする行政機関のFDA(アメリカ食品医薬品局)が1979年に禁止の方針を打ち出し、その後1980~1990年代にかけて法整備が進み、人工毛植毛を法律で禁止するに至っています。

人工毛植毛を法律で禁止しているのはアメリカやカナダです。日本では禁止されておらず、ヨーロッパでも法的規制が無い国が多いのですが、どの国の場合でも、人工毛植毛は評価が低く、一般的に広く行われることが無い方法といえます。

人工毛植毛を行った箇所はさまざまな雑菌が入りやすく、細菌感染による感染症を招く可能性が高いといえます。ときには感染症が人体に重大な症状を引き起こす危険性もあります。

また、人体の拒絶反応によって、化膿や炎症、アレルギー症状を引き起こす可能性が高いといえます。こうした症状が起きなくても、人工毛はとても抜けやすく、生育しない人工の毛髪ですから、周りの自毛と調和させるため、継続的なメンテナンスが必要となります。

人工毛植毛は確かに即効性があり、自由に髪を増やすことができる治療法です。しかし、そうしたメリットをはるかに上回る人体へのリスクを考えると、人工毛植毛はおすすめすることの出来ない治療法といえます。