自毛植毛のメリット・デメリット

自毛植毛とは、健康な髪が生えている部分から毛根ごと毛髪を採取して、薄毛が目立つ部分に移植する植毛法です。植毛には、自分の毛髪を使う「自毛植毛」と、人工毛を使う「人工毛植毛」の2種類の方法があります。

自毛植毛の場合、主に後頭部(または側頭部)から採取されます。こうした部分には5αリダクターゼ2型が存在しません。5αリダクターゼとは、1型と2型という2つのタイプがある酵素であり、男性型脱毛症(AGA)に関わることが知られています。

5αリダクターゼは、テストステロンという体の形成に役立つ男性ホルモンに働きかけ、より強い男性ホルモンのジヒドロテストテロン(DHT)に変化させます。DHTが増えると、毛乳頭が萎縮し、毛髪を作る毛母細胞の活動が阻害されます。これがAGAの発生メカニズムです。

その一方、5αリダクターゼ2型は、頭部のなかでは前頭部や頭頂部にしか存在せず、後頭部などには存在しません。このため、後頭部の毛根を移植しても、DHTが発生することは無く、移植後にAGAを心配する必要はありません。

なお、植毛は日本では医療行為として取り扱われます。自毛植毛であれ、人工毛植毛であれ、医師が医療機関で行うものと法律で定められています。ここでは、自毛植毛のメリットとデメリットを詳しく取り上げていきます。

自毛植毛のメリット

自毛植毛は、自分自身の毛髪を移植するため(自家移植)、人工毛植毛のように免疫反応・拒絶反応が起こらず、安全性の高い治療法といえます。

なお、人工毛植毛は拒絶反応による化膿や炎症、人工毛を植え込んだ箇所による細菌感染からの感染症といったリスクがあります。人工毛植毛はアメリカやカナダでは法律で禁止されているほか、日本やヨーロッパでも評価の低い方法であり、おすすめはできない治療法です。

その一方、自毛植毛はこうしたリスクを心配する必要がありません。自分の毛髪ですから、術後にいったん抜け落ちた場合でも、ヘアサイクルの成長期を迎えれば、また自然に発毛していくことができます。

自毛植毛は、髪が抜けてもまた自分から生え変わることができますし、手術を受けたあとは、特別なメンテナンスが不要なのも大きなメリットといえます。保険が適用されない自由診療ですから費用は高額ですが、維持費がかからないため、長い目で見ればそう高いということもなくなると思います。

自毛植毛は、自然な毛髪を確実に取り戻すだけでなく、安全性が高い治療法だといえます。いったん抜け落ちても、正常なヘアサイクルによって生え変わっていきますし、術後の特別な維持費がかからない点も大きなメリットといえます。

自毛植毛のデメリット

自毛植毛は、日本皮膚科学会の「男性型脱毛症の診療ガイドライン」によれば、Bランク(行くよう勧められる)という評価を得ています。これは上から2番めの高評価なのですが、十分な経験と技術を持つ医師が行う場合という条件が付けられています。

つまり、自毛植毛は勧められる薄毛治療であるが、技術の熟達した医師のもとで行うべきであるとしています。自毛植毛の結果は、医療機関の適切な検査や医師の技量に左右される部分が非常に大きい治療法といえます。

具体的には、自毛植毛が成功するかどうか、術後に痛み・しびれ・知覚異常などが見られるかどうか、不自然な仕上がりになっていないかどうか、定着率はどれくらいか、傷跡・縫合跡が目立たないかどうかなどの点は、医師の熟練度次第だといえます。

自毛植毛の仕上がりについては、特に生え際の出来は、医師の熟練度によって違ってくると思います。また、移植した毛髪が成長を続けても、周りの毛髪の薄毛が進行した場合には、統一感を持たせるための工夫や対処が別途必要となります。

定着率については、最初から高い密度で植毛を行うと定着率が下がってしまいます。このため、1回の植毛で増やせる毛髪の密度には限界があり、最終的な目的に合わせるために、施術を複数回に分けて実施する場合もあります。

傷跡・縫合跡に関しては、手術技術の進歩により、外見でパッとわかるほど目立つということはほとんど無くなっています。ただし、自分で触るとわかるような傷跡・縫合跡は残るため、スキンヘッドや極端な短髪はしにくく、頭垢が溜まりやすいかもしれません。

また、当然ながら自毛には限りがあり、特に自毛植毛に適した部分は後頭部などに限定されます。自家移植ですから全体の毛髪量は変わらないため、どの部分を採取してどの部分に移植するかという方針も非常に重要になってきます。

そもそも自毛植毛は、全体的に髪の量を増やすという治療には向いていません。狭い範囲の髪の毛を部分的に復活させる用途に適した植毛法だといえます。頭皮全体の薄毛が進行している方では、なかには採取自体が難しいケースもあります。

自毛植毛はおすすめできるか

ここまで自毛植毛のメリット・デメリットを見てきました。自毛植毛は安全性がとても高く、確実に毛を伸ばせる治療法です。移植後の毛髪に対して、一般的に特別な維持費はかからないというメリットも挙げられます。

その一方、自毛植毛は、手術自体の成否や仕上がり・定着率、術後の経過(痛み・しびれ・知覚異常など)、傷跡・縫合跡の様子など、医療機関や医師によって大きく左右される治療法といえます。

結論を言えば、適切な検査が受けられる医療機関で、高い技能を持つ熟練の医師が施術すれば、自毛植毛はほとんど心配することの無い安全な治療法です。ただし、保険適用外ですから費用は高額ですし、自毛には限度があるため全体的な毛髪量のアップには適さない点も注意が必要です。