育毛剤の種類と使い方

今回は、育毛剤の種類と使い方について詳しく取り上げます。育毛剤は、「医薬部外品」または「化粧品」に分類されるものが主流です(なかには「医薬品」に指定された育毛剤もあります)。

まずはこの種類を正しく知ることで、育毛剤を賢く選ぶことが可能となります。

育毛剤の種類

医薬品・医薬部外品・化粧品の違いは、こうした医療に関わる製品や医療機器に関する規制を定めた「薬機法」(かつての旧・薬事法)という法律で定められています。

それによれば、「医薬品」とは、病気の診断・治療・予防のために使われる薬品であり、医師による処方に基づく医療用医薬品と、誰でも購入できる一般用医薬品があります。

ただし、一般用医薬品は医師の処方が不要の代わりに、主に消費者に対する情報提供の必要性の程度によって、第一類、第二類、第三類の3種に分類されています。これは、副作用等のリスクに応じた区分といえます。

日本では、医薬品を流通させるためには、厚生労働大臣による製造販売承認が必要です。また、医師法や歯科医師法に基づく医療機関以外における医薬品の販売は、都道府県知事の許可が必要です。

一方、「医薬部外品」とは、人体への作用が医薬品より緩やかなもので、何らかの改善効果や予防効果を目的とするものです。医薬部外品は、厚生労働大臣が指定したものが該当します。

医薬部外品は、製造・販売(元売)または製造だけでも、国の許可が必要です。ただし、小売販売は医薬品と異なり、特別な許可制度が無いため、スーパー、コンビニ、ディスカウントストアなどで気軽に購入することができます。

育毛剤や化粧品などの場合、分類上は医薬部外品の性質を持つ製品では、単なる化粧品では無いことを明確化するため、「薬用育毛剤」「薬用化粧品」「薬用石鹸」など「薬用」と付ける場合が多く見られます。

一般的には「薬用育毛剤」という場合、分類上の化粧品とは異なり、医薬品よりは緩いものの、ある程度の薬用効果(症状の予防や改善)が期待できる医薬部外品だといえます。

さらに、「化粧品」とは、身体を清潔にしたり、見た目を美しくしたり、皮膚や毛髪を健やかに保つために使われるもので、緩やかな作用を持つものである、という趣旨の定義が、薬機法で定められています。

化粧品も製造販売(元売)や輸入販売には許可が必要ですが、小売販売には特別な許可制度は無く、気軽に購入できます。ただし、医薬品のような厚生労働大臣による承認制度や、医薬部外品のような厚生労働大臣による指定制度が無く、明確な薬用効果が無いものといえます。

育毛剤においては、医薬品や医薬部外品(薬用育毛剤)に該当しないものは、それぞれの基準を満たすだけの有効成分や薬用効果を有しておらず、法律上の分類で「化粧品」にとどまるものといえます。

「有効成分」とは、医薬品や医薬部外品に含まれる物質のうち、実際に人体に作用する性質を持つ成分のことです。とりわけ重要な成分は、「主成分」ということが多く見られます。

化粧品には、薬用効果をもたらす有効成分(主成分)が含まれてない、あるいは、含まれていても、医薬品や薬用部外品といえるだけの十分な基準を満たしていないということがいえます。

育毛剤と成分・効果

ここからは、代表的な育毛剤と有効成分(主成分)およびその薬用効果について、医薬品(医療用医薬品、一般用医薬品)および医薬部外品(薬用育毛剤)の順に取り上げていきます。

医療用医薬品の育毛剤

育毛剤のうち、医師の処方が必要で医療機関で使われる医療用医薬品には、プロペシア(MSD社。かつての旧・万有製薬)という飲み薬(錠剤)があります。この医薬品の主成分は、フィナステリドという物質です。

フィナステリドは2型の5α-リダクターゼという酵素を阻害する効果があります。この酵素は、男性ホルモンのテストステロンに働きかけ、より強いDHT(ジヒドロテストステロン)に変化させる作用があります。

DHTが増えることは、男性型脱毛症(AGA)の発症原因であることがわかっています。このため、フィナステリドはDHTを増やす働きがある酵素の働きを阻害することで、AGAが起きないようにする強力な効果があります。

フィナステリドは、非常に強いAGA治療薬ですが、性欲減退、勃起不全、肝機能障害、全身倦怠感、うつ、胃部不快感など、副作用の可能性も指摘されています。また、女性や未成年の方は、ホルモンバランスを崩したり、胎児への悪影響が懸念されるため、服用すべきではありません。

一般用医薬品の育毛剤

その一方、一般用医薬品の育毛剤としては、リアップ(大正製薬/第1類医薬品)やカロヤンガッシュ(第一三共ヘルスケア/第3類医薬品)が挙げられます。

まず、リアップの主成分は、ミノキシジルです。ミノキシジルは、もともと高血圧の経口薬として開発され、血圧降下剤として使われたのですが、発毛効果が発見されたため、発毛剤に転用された物質です。

ミノキシジルは、頭部に塗布する液状の外用薬として、国内ではリアップ、日本以外ではロゲイン(Rogaine)という商品名で発売されています。これとは別に、日本国内では未承認・未認可ですが、海外では内服薬としてロニテン(Loniten)という商品名で流通しています。

ミノキシジルは、内服薬としては日本は未承認です。こちらは本来、高血圧の治療のための血管拡張薬であり、これを薄毛治療のために服用すると、重篤な症状を引き起こす可能性もあることに注意が必要です。

ミノキシジルの発毛効果のメカニズムは、科学的な意味で厳密に解明されているわけではありません。しかし、脱毛に対抗し、発毛を促進する効果があることは明確に確認されています。

リアップは第1類医薬品であり、市販の医薬品のなかでも特に強い効果があります。その反面、さまざまな副作用も指摘されています。先述通り、多量の投与は低血圧を招きますし、頭皮に直接かかる薬ですから、頭皮の痒みやアレルギー反応も見られます。

また、大正製薬では、リアップは壮年性脱毛症でのみ有効であるとしており、未成年の方は使えません。成分が母乳中に移行するため、授乳中の方も避けるべきでしょう。リアップの添付文書では性欲減退や不整脈などの可能性にも触れていますし、男性用と女性用の区分も守るべきです。

カロヤンガッシュは、ローション状の外用薬です。血管を拡張し、発毛促進効果があるとされるカルプロニウム塩化物水和物(カルプロニウム塩化物)、皮膚の皮脂量を下げることで抜毛予防に効果があるカシュウチンキ、毛乳頭細胞の活性化を通じて発毛促進効果があるチクセツニンジンチンキが含まれています。

さらにカロヤンガッシュでは、殺菌作用があり、ふけ、かゆみに効果があるヒノキチオール、パントテン酸の誘導体で、皮ふや頭髪の健康維持を助けるパントテニールエチルエーテルも配合されています。

カロヤンガッシュは第3類医薬品です。他の育毛剤に比べ、頭皮や毛根の血流の改善を重視した育毛剤といえます。医薬品としては効果が弱いものの、副作用の心配も比較的多くない育毛剤といえます。

薬用育毛剤(医薬部外品)

医薬部外品である薬用育毛剤には、アデノゲン(資生堂)、イノベート(ライオン)、スカルプグロウF(アデランス)が挙げられます。

アデノゲンには、有効成分アデノシンが配合されています。アデノシンは、発毛促進因子(FGF-7)を産生し、これが毛母細胞に作用することで、発毛を促進する効果が期待できます。

このほかアデノゲンには、殺菌作用もあるとされるβ‐グリチルレチン酸、毛母細胞の活性化を促すとされるパントテニルエチルエーテルも含まれています。これらは、ともに毛髪の成長に働きかけ、健全なヘアサイクルを促進する効果が期待されています。

薬用育毛剤(医薬部外品)の場合、単に発毛を促進するだけでなく、頭皮環境を整えることで正常な毛髪の成長サイクルを取り戻すことが期待されています。

アデノゲンの場合も、パナックスジンセンエキスおよびソフォラ抽出エキスという和漢植物薬用成分が配合されています。これらは、代謝促進と血行改善を通じた頭皮環境のサポートを目的に配合された有効成分といえます。

一方、ライオンのイノベートは、毛髪の成長に必要なタンパク質(エフリン、BMP)の生成を促すサイトプリン(6-ベンジルアミノプリン)と、毛根細胞内の髪の元となるタンパク質(ケラチン)の合成に必要なエネルギーを供給するペンタデカン(ペンタデカン酸グリセリド)を有効成分と位置づけています。

サイトプリンは発毛促進シグナル増幅、ペンタデカンは発毛エネルギー供給の機能が期待されています。このためイノベートは、細胞内のタンパク質にダブルのアクションで発毛を促進する育毛剤といえます。

これとは別にイノベートでは、ビタミンE誘導体(酢酸トコフェロール)も有効成分として配合しています。こちらは毛根の血流を改善する血行促進成分であり、頭髪環境をサポートする成分といえます。

アデランスのスカルプグロウFは、育毛・養毛に関する3つの有効成分と、非常に豊富な保湿成分を贅沢に配合した、頭髪のトータルケアに優れた育毛剤です。

育毛・養毛に関する成分では、抗アレルギー作用を持ち、アレルギーを抑えたり血流の改善に効果があるセファランチン、やはり血行改善効果に加え、皮膚や粘膜を正常に保つ働きを持ったニコチン酸アミド(ニコチンアミドともいいます)が積極的に発毛を促します。

これに加え、パンテノール(プロビタミンB5)も配合しています。パンテノールは頭皮に浸透しやすく保湿効果を持ち、かゆみ肌から頭皮を守る組織保護のサポート機能もあります。肌を炎症から守り、補修機能を通じた育毛の環境整備に役立つ成分です。

これとは別に、育毛剤スカルプグロウFにおいては、カンゾウ葉エキス、アシタバエキス、ビワ葉エキス、ホップエキス、ヒオウギ抽出液など、髪に潤いを与え、髪が自然に成長する環境をサポートする天然由来の成分も数多く配合しています。

スカルプグロウFは医薬部外品(薬用育毛剤)であり、成長因子への働きかけにとどまらず、正常なヘアサイクルに適した頭皮環境の整備を通じて、自然に健康的な育毛・発毛が行われるトータルな頭皮サポートに優れた育毛剤といえます。

育毛剤の正しい使い方

育毛剤はさまざまな種類があります。医薬品として使われる育毛剤は、医学的根拠に基づく薬効を重視しています。薬用育毛剤(医薬部外品)は副作用のリスクがほとんど無く、ヘアサイクルを重視して頭皮環境を整える全体的なサポートに優れたものが見られます。

どの育毛剤を使う場合でも、正しく使うことで、より良い発毛・育毛効果が期待できます。ひとつには、効果が出ないからといって短期間にあれこれと取り替えないことです。

医師の処方が必要な医療用医薬品なら、その医師の指示に従ってきちんと使うべきですし、市販の育毛剤なら、添付文書や説明書をよく読んで、きちんと使い続けることです。

育毛剤を使いだして、すぐに発毛効果が出るというものではありませんし、使用開始直後に薄毛や抜け毛が進んでも、悲観しすぎる必要はありません。毛髪の成長サイクルは1日や数日で変わるものではなく、現にある毛髪は、それ以前からの過去のヘアサイクルの積み重ねです。

これは逆に、育毛剤を使った効果が出るかどうかは、数ヶ月間は様子をみるべきだということにつながります。一般的な育毛剤の多くは、3~6ヶ月間が目安だといえますし、説明書や添付文書に記載されている場合もあります。

育毛剤の難しいところは、使ってみないと分からないという点ですし、ある人に効果が出た育毛剤が自分にはダメだったというような個人差がある点です。使い続けた育毛剤の効果を実感できなかったら、6ヶ月をひとつの大きな目安として、他の育毛剤に替えることをおすすめします。

育毛剤には、誰にでも100%効果がある絶対的なものはありません。しかしそれは、ご本人が良い使い心地を感じたり、それなりに満足したと思ったら、その育毛剤がそのご本人にとっての「良い育毛剤」ということがいえると思います。