IGF-1と毛髪の関係

IGF-1とは、インスリン様成長因子1のことです。このインスリン様成長因子(Insulin-like growth factors=IGFs)には、IGF-1とIGF-2(インスリン様成長因子1とインスリン様成長因子2)があります。

このうち、IGF-1は、髪の毛の正常な成長期を維持する役割があり、髪の生え変わりを通じた健全なヘアサイクルに関わる物質と考えられています。また、頭頂部の脱毛に関連していることも明らかになっています。

ここでは、インスリン様成長因子について詳しく説明した上で、IGF-1と毛髪との関係について見ていきます。

インスリン様成長因子とは

「インスリン様成長因子」は、その名称が示す通り、血糖を抑制する作用で知られるインスリン(インシュリン)と比べて、配列が非常によく似た構造を持ったポリペプチドです。

ポリペプチドとは、決まった順番で様々なアミノ酸がつながってできた分子の系統群(これを「ペプチド」といいます)のうち、線形の鎖状になったものを意味します。インシュリンもアミノ酸を組み合わせて出来ているペプチド類の1つです。

インスリン様成長因子もインスリンも、内分泌機能を持ちあわせたペプチドであるため、「ペプチドホルモン」または「ペプチド型ホルモン」と呼ばれます。ホルモンとは、人体にさまざまな調整作用を働きかける生理活性物質のことです。

インスリン様成長因子は、IGF-1とIGF-2のどちらも、細胞分裂を誘発する反応を引き起こすことがわかっています。特にIGF-2のほうは、第一の成長因子として、脳、肝臓、腎臓の発生に関わり、胎児の発生に必要な物質です。

IGF-1のほうは、それよりは後の段階で発現します。こちらは人体の大半の細胞に影響を与え、DNAの合成を調節したり、細胞の成長・発達に寄与する物質です。特に神経細胞や、筋肉、骨、肝臓、腎臓、皮膚、肺の細胞に作用しています。

このIGF-1とIGF-2がどれだけ働くかという点については、IGF結合タンパク質と呼ばれる一連のタンパク質が関わっています。このうち、6つのIGF結合タンパク質(IGFBP1-6)の特徴が明らかになっています。

IGF結合タンパク質は、進化上、共通の祖先(遺伝子)に由来すると推定される遺伝子群(これを「遺伝子ファミリー」といいます)であり、そのタンパク質をまとめたグループです。遺伝子ファミリーは、配列と機能が互いに似通った遺伝子群です。

ところで、ある物質がなんらかの作用を引き起こそうと働きかけを行うことに対し、その働きかけを受け止めることで、実際の作用を促すものを「受容体」(レセプター)といいます。人体では、受容体によって促進される作用が数多くあります。

IGF-1とIGF-2も、先述通りの作用を引き起こそうと、受容体に働きかけます。そこでIGF結合タンパク質の役割として考えられているのは、IGF作用の促進と抑制の両方に関わる複合体となって、インスリン様成長因子の作用の調節を助けている点です。

インスリン様成長因子は、加齢や寿命にも関係があるとする研究成果も発表されています。このほか、糖尿病やガンとの関係も考えられていますが、まだまだ科学的に明らかになっていない部分もあります。

IGF-1もIGF-2も、人体の成長を促す成長因子であり、どちらもIGF-1受容体に強力に結合して活性化させることに加え、インスリン受容体と弱く結合することもわかっています。その一方、IGF-2受容体はIGF-2とだけ結合し、細胞内シグナル経路を活性化させない働きがわかっています。

IGF-1はインスリンのような構造を持った成長因子です。成長ホルモンによって肝臓や骨格筋などで生産されます。IGF-1の役割は、成長ホルモンの作用を仲介するものだといえます。

IGF-1が発毛に果たす役割

成長ホルモンが毛根に作用すると、毛乳頭細胞でIGF-1がたくさん作られます。毛乳頭は毛細血管と結合しており、血液が運んできた栄養分や酸素を毛母細胞に受け渡し、毛母細胞に発毛を促す働きがあります。

その一方、IGF-1が毛乳頭で作られるとともに、毛母細胞でもIGF-1の働きかけを受け取る受容体が生成されます。IGF-1は成長ホルモンの作用を仲介し、毛母細胞が細胞分裂を繰り返すことで毛髪が生育し、健全な成長期が維持される調整機能に関わります。

IGF-1は成長ホルモンと同じく、加齢によって減少する傾向があります。ほとんどの方が思春期以降は減っていきます。ただし、体内のホルモンバランスを乱すことが無ければ、年齢に応じた調整機能を維持することが可能です。

過度な飲酒やタバコを避けたり、適度な運動や十分な睡眠、糖分や脂肪を取りすぎない適切な食生活といった基本的な生活習慣を意識して続けることは、こうした体内のホルモンバランスという調整機能の維持にとって最良の方法です。

IGF-1は乳製品によく含まれ、特に牛乳や牛乳由来の製品には多く含まれています。このほか、大豆やさまざな食品を取り上げ、IGF-1の摂取を提唱する研究者もおられます。

また、薬用シャンプーやコンディショナーで清潔な毛髪を維持したり、薬用育毛剤で頭皮ケアを行うことに関して、IGF-1に限らず成長因子の活性化に良い影響を与えると考えて作られた製品も数多くあります。こうした日頃からのケアは、頭皮環境を整えるという意味から、正しく行っておくべきだといえます。