皮脂は取りすぎても溜まりすぎても良くない。

皮脂は、取りすぎても溜まりすぎても頭皮環境には良くありません。「溜まりすぎるのは良くない」というのはなんとなく理解できる方でも、「取りすぎても良くない」という点は初めて聞く方も多いかと思います。

そこで今回は、そもそも皮脂が分泌される仕組みや目的を取り上げ、皮脂について放置をするのも神経質になりすぎるのも良くない理由を説明していきます。

皮脂とは

皮脂の正体は、グリセリン脂肪酸エステルです。この物質は、製パン・菓子パン、ケーキ、アイスクリーム、キャラメル、キャンディなど乳化剤として使われることが多い物質として知られています。

皮脂は皮脂腺から分泌されます。皮脂腺は1本1本の体毛ごとに存在しており、頭皮に限らず皮膚の内部に存在して皮脂を分泌する役割を果たしています。特に頭皮は皮脂腺が発達している場所であり、多量の皮脂を分泌しています。

皮脂はエマルションのような液体です。エマルションとは、1nm~1000nm(1μm)程度の粒子が、気体、液体、固体に浮遊あるいは懸濁している物質(これを「分散系」といいます)のうち、分散している粒子(分散質)も粒子が分散している媒質(分散媒)も液体のものを指します。

エマルションの例としては、牛乳、マヨネーズ、アクリル絵具などが挙げられます。皮脂は、このエマルションのような液体です。皮脂腺から分泌された皮脂は、体毛や皮膚の表面に薄い膜状に広がります。

頭皮にどれだけ皮脂が分泌されるかは、個人差があります。過剰に分泌されることが多く、頭皮がベタベタ気味の方もいれば、ほとんど皮脂が分泌されず、カサカサの乾燥肌という方もいます。

皮脂の役割

頭皮環境において皮脂腺は、皮膚表面に近い毛根上部に存在し、皮脂を分泌します。そして薄く広がって毛髪や頭皮を保護、保湿する役割を果たします。

また、皮脂の正体は、グリセリン脂肪酸エステルだと言いました。この物質は、グリセリンと脂肪酸がエステル結合と呼ばれる結合で結びついた物質です。皮脂は、皮膚に生息する常在菌によって分解され、脂肪酸が生じます。

常在菌とは、微生物(細菌)のうち健康な人体にも幅広く見られ、病原性を示さないもののことです。常在菌は、腸管内に存在する腸内細菌が有名ですが、皮膚や口腔・鼻腔、生殖器にも数百種類が共存しています。

常在菌は細菌の一種であり、免疫力が低下した方に対して日和見感染を起こすこともあります。ただし、基本的には人の健康に影響を与えることはなく、人体と共生関係にあるものが常在菌です。

常在菌は安定的にたくさん存在することで、侵入した病原菌(病原性微生物)の繁殖を抑制し、発病を防ぐ効果があると考えられています。例えば、強力な抗生物質を使って常在菌が極端に減少すると、他の細菌やカビなどが爆発的に繁殖し、病原性を示す事があります。

頭皮の場合、常在菌の分解作用によって皮脂から生成された脂肪酸は、皮膚や毛髪の表面に存在します。これは弱酸性の性質を示し、病原菌を排除する機能があります。

皮脂は、脂質の性質を持った物質です。このため、頭皮に適度に分泌されることは、皮膚や毛髪を乾燥から守る保湿効果があります。その一方、それ自体が頭皮を保護する機能を持っていますし、常在菌の分解作用で発生する脂肪酸は、病原菌を排除する役割を果たします。

皮脂を溜めすぎないように

ただし、皮脂自体、皮脂腺細胞の崩壊物から構成された物質であり、新陳代謝の結果として生成される物質です。また、強いストレスを受けた時は、通常より強い臭いを伴う皮脂が分泌されます。これは、ストレスによって急増する活性酸素が皮脂腺を活性化するためです。

このため、あまりにも多くの皮脂を放置したり溜まった状態にすることは、頭皮環境の悪化を招きますし、美容上も望ましい状態とはいえません。シャンプーを使って頭皮や毛髪を適度に清潔にすることには、大きな意味があるといえます。

ここまで見てきたように、皮脂自体は頭皮の保湿・保護作用がありますし、常在菌の分解作用によって生じる脂肪酸が頭皮を弱酸性にして、病原菌から守ってくれる役割があります。

ただし、皮脂自体が一種の老廃物ですし、あまり頭皮環境を放置しておくと、臭いを発することがあります。このため、皮脂に対して何もケアしないというのは論外ですし、適切な感覚で頭皮環境を洗浄することが望ましいといえます。

皮脂の取り過ぎもNG

その一方、皮脂の溜め過ぎを気にして、ゴシゴシと過剰に洗うこともNGです。皮脂は一種の脂質であり、頭皮における皮脂不足が生じれば、常在菌による脂肪酸の生成も不足します。こうなると、毛髪や頭皮がカサカサに乾燥したり、病原菌や異物への防御能力が低下します。

また、先ほども取り上げたように、頭皮において過剰な除菌を行えば、常在菌が減少することで病原菌を防ぐ能力が低下し、感染症をはじめとするさまざまな疾患を招く可能性があります。

もちろん、単純に頭皮を指先でゴシゴシとやりすぎることは、物理的に頭皮を傷つけ、毛細血管や毛根部の損傷を通じた毛髪の成長の阻害という逆効果となる可能性もあります。

実際の皮脂の分泌量は個人差がありますし、リンスやコンディショナーなどで頭髪の補修や保湿に取り組むこと自体はとても意味があります。これらの成分は、皮脂を分泌する頭髪の性質を織り込み済みの上で作られていますし、自然な人体の活動とリンスなどの毛髪ケアは相互に補完しあってより良い頭皮環境の整備に役立ちます。

こうした点を踏まえて、シャンプーなどで頭皮を洗浄する際は、ゴシゴシと無理に強い力を与えず、やさしくやわらかい感じで、余分な老廃物を洗い落とす適度な感覚を維持するようにしましょう。