毛髪のヘアサイクル

毛髪には、毛が生まれてから成長し、その毛が抜け落ちるだけでなく、その毛にかわって新たな毛が生まれることを繰り返す成長サイクルがあります。これをヘアサイクルといいます。

ヘアサイクルの仕組みを知ることは、同じ抜け毛であっても、新しい毛の生育を迎える正常なヘアサイクルの場合と、薄毛や脱毛症の場合を区別できることにつながります。

ここでは、こうした毛髪のヘアサイクルの過程について詳しく取り上げます。なお、本文中に出てくる頭髪の各部分について分からないという方は、先に髪の毛の構造で説明していますので参考になさってください。

ヘアサイクルの毛周期

髪の毛は、毛が誕生してからどんどん伸び続ける成長期、成長をやめるようになって頭皮が存在する上部へと上がっていく退行期(移行期)、完全に成長がなくなっていつでも抜け落ちるようになる休止期を迎えます。

成長期は、髪の毛の元となる毛母細胞が頻繁に細胞分裂を繰り返して毛髪が伸び続け、毛根の活動が非常に活発になる時期です。成長期には髪の毛は約1ヶ月に1センチのペースで伸び続けます。

成長期には、毛細血管から運ばれた栄養分や酸素が、毛乳頭を通じて毛球に受け渡されます。毛球に集まっている毛母細胞は、毛乳頭の活発な働きを受けて活性化し、細胞分裂を繰り返してどんどん髪の毛を伸ばしていきます。

退行期(移行期)は、それまで成長を続けていた髪の毛が、2~3週間かけて生育を止めていく時期です。毛母細胞が分裂をやめるようになって毛球が縮小し、毛根が上部のほうへ上がっていきます。

退行期を経た髪の毛は、休止期を迎えています。これは、完全に細胞分裂をやめており、成長が全く無い状態の毛です。棍毛(こんもう)と呼ばれる死んだ状態の毛髪であり、簡単に抜け落ちる状態となっています。

その一方、先に生えた毛が休止期を迎えて抜ける頃には、新たな毛髪が生成され、成長期を迎えます。新たな毛の生育は、毛乳頭の細胞が働きかけ、幹細胞の反応によって、毛芽(もうが)と呼ばれる新たな髪のもとが作られます。

新たな髪の毛の生成が始まると、それに押し出されるように古い髪の毛は抜け落ち、新しい成長期が始まります。このように髪の毛は、成長期→退行期→休止期を繰り返すことで、新しい髪の毛へと生え変わるヘアサイクルを持っているのです。

正常なヘアサイクルと薄毛・脱毛症の違い

その一方、頭髪にあるすべての毛が同じヘアサイクルの時期を迎えるわけではなく、通常は全部の毛髪が一度に抜け落ちるということはありません。すべての毛ひとつひとつが異なる周期を持って、このヘアサイクルを繰り返しているためです。

また、成長期は2~6年と言われますが、男性は2~5年、女性は3~6年とも言われ、もっと長い期間というひとも存在します。退行期(移行期)は2~3週間、休止期は2~4ヶ月続きますが、どの時期も個人差が見られます。

その一方、ヘアサイクルの毛髪の90%近くは成長期、1~2%は退行期(移行期)、10%以上が休止期が一般的な状態と言われています。大半の髪の毛は伸び続ける一方、1割を超える髪が抜け落ちて生え変わる時期を迎えているのが通常のヘアサイクルです。

ところで、平均的な髪の毛の総本数は10万本ですが、そのうち休止期を迎える時期が2~4ヶ月で、髪の毛の10%以上は休止期ということは、正常なヘアサイクルでも2~4ヶ月で1万本以上が抜け落ちることを意味しています。

これを1日あたりに換算すると、1万本を3ヶ月(90日)で割ったとして約111本ということになります。実際に通常のヘアサイクルでは、平均して1日に50~100本は自然と抜け落ちるとともに、新たに生え変わっているといえます。

これは健康的なヘアサイクルが順調に進んでいる方の場合です。1日に50~80本、あるいは100本程度が毎日抜け落ちたとしても、抜け落ちたぶんだけ、新たに毛髪が生成されている方であれば、何も問題はありません。

ところが、毛髪が抜け落ちたあと、新たに生成された髪の毛が十分に育たない方は、髪のボリュームを失う状態に陥ります。これが薄毛です。また、毛髪が抜け落ちるばかりで、新たに毛髪が生育しないという方は、脱毛症ということになります。

同じ抜け毛であっても、正常なヘアサイクルによるものか、薄毛・脱毛症によるものかは、抜け落ちた毛髪をよく見れば判断できることがあります。薄毛や脱毛症の原因は、ヘアサイクルが正常に機能していない状態が考えられるからです。

ヘアサイクルが乱れるということは、成長期を十分に迎えることが出来ず、毛髪がしっかりと育たなかったり、休止期が長くなって抜け落ちる毛髪が増え続けるといった状況が挙げられます。

また、新たに生え変わる髪の毛が見られないという場合は、抜け落ちた髪の毛のあとに新しい髪の生成に関わる毛乳頭や毛母細胞、および、これらに栄養分を運ぶ毛細血管の活力低下が疑われます。これも、ヘアサイクルの乱れの一種といえます。

正常なヘアサイクルに基づく髪の毛の生え変わりであれば、新たに生成された毛髪が十分な成長期を過ごしているため、長くて硬くしっかりした髪の毛が抜け落ちているはずです。

これに対し、抜け落ちた毛髪が柔らかくて細かったり、いつも以上に抜け落ちた髪の本数が多いという場合は、成長期が短縮してしまって髪が十分に伸びていなかったり、休止期が長くなっているといったヘアサイクルの異常な変化を疑うべきでしょう。

薄毛にしろ脱毛症にしろ、共通しているのは、髪の生育に関わる毛周期が異常な状態に陥ったヘアサイクルの乱れといえます。ヘアサイクルの正常化を取り戻すために、毛髪が生成されやすい環境を整え、血流の改善や毛乳頭・毛母細胞への働きかけが、非常に重要な頭髪ケアといえます。