成長ホルモンの発毛・育毛効果と睡眠

睡眠や強めの運動は、成長ホルモンの分泌を促すことでIGF-1(インスリン様成長因子1)が作られるようになり、これが毛根に対して健全な毛髪の成長サイクルを働きかけるという効果をもたらします。

IGF-1は、毛乳頭細胞で大量に分泌されることで、成長ホルモンから受け取った発毛の促進作用を毛根に働きかける物質です。IGF-1(インスリン様成長因子1)とは何かや、IGF-1が発毛に果たす役割については、IGF-1と毛髪の関係で詳しく説明しています。

その一方、発毛・育毛に役立つIGF-1は、主に肝臓で分泌される成長ホルモンの刺激を受けて分泌され、毛根に働きかけることが分かっています。つまり、成長ホルモンが大量に分泌されることが、発毛の促進には必要だということです。

その成長ホルモンに関しては、睡眠や強度の強い運動を行うことが、より多くの分泌の促進につながることも解明されています。負荷の高い運動が難しい方でも、十分な睡眠を取ることで髪の毛の改善を導くことが可能です。

ここでは、そもそも発毛・育毛を導く成長ホルモンとは何かや、どうして睡眠が髪の毛の生育に役立つのかについて、詳しく見ていきます。

成長ホルモンとは

成長ホルモンとは、脳下垂体前葉(脳の腹側の直下に存在する脳下垂体の前部。脳下垂体は下垂体ともいいます)という内分泌器から分泌されるホルモンです。成長ホルモンはGH(growth hormone)と呼ばれ、特に人間のヒト成長ホルモンはhGH(human GH)と言われます。

ホルモンとは、その物質が生成されることで、特定の作用が促進される役割を持つ生理活性物質の総称です。多くのホルモンは、生物の状態を一定に保とうとする恒常性(ホメオスタシス)の維持に関与しています。

このうち成長ホルモンは、主に191個のアミノ酸からなる物質です。これが脳下垂体前葉から分泌されると、成長と代謝に関する作用を促すことが知られています。

このうち、成長に関しては、幼児期に骨端の軟骨細胞の分裂・増殖を促して骨を伸張させたり、特定のアミノ酸の取り込みを促してタンパク質合成を促進することで筋肉を成長させる作用があります。

成長ホルモンの分泌が不足すると成長ホルモン分泌不全性低身長症、成長ホルモンの分泌が過剰になると先端巨大症が発症するのは、骨や筋肉の成長促進作用を持っている成長ホルモンに関して、適度な分泌が行われなかったことが原因です。

その一方、代謝に関しては、成長ホルモンの分泌によって、炭水化物、タンパク質、脂質の代謝を促進する作用が生じます。また、肝臓でのグリコーゲン分解を促し、インスリンを抑制して血糖値を上昇させる作用(抗インスリン作用)があるため、血糖値を一定に保つ機能を持っています。

さらに成長ホルモンは、カルシウム濃度などを一定に保ち、体内の恒常性(ホメオスタシス)を維持する作用や、エネルギー不足の時に脂肪組織から体脂肪を動員させる(遊離脂肪酸の形で放出させる)作用を持っています。

このように、成長ホルモンが分泌されることは、成長と代謝に関わる非常に大きな作用が生じます。そこで、成長ホルモンがそれぞれの器官に働きかける場合、その標的器官に直接働きかける場合と、主に肝臓で分泌されるIGF-1が働きかける場合があります。

その一方、特に毛髪の健全な成長サイクルを促す場合は、大量に分泌された成長ホルモンは毛根への刺激となり、毛乳頭細胞でIGF-1がたくさん作られます。IGF-1は成長ホルモンの作用を受け継ぐ仲介役となって、毛母細胞の分裂を通じた健全な毛髪の生育を働きかけます。

成長ホルモンと発毛・育毛

このように、成長ホルモンが分泌されると、毛根への刺激となって毛乳頭細胞でIGF-1がたくさん作られ、これが成長ホルモンから毛母細胞への働きかけを引き継いで発毛・育毛を促進する役割を果たします。

(毛根、毛乳頭、毛母細胞の違いが分からない方は、髪の毛の構造で各部分を説明していますので参考になさってください。また、健全な毛髪のヘアサイクルについては、毛髪のヘアサイクルで詳しく説明しています)

成長ホルモンが発毛・育毛に役立つことがわかったところで、それではどうしたら成長ホルモンが少しでも多く分泌されるのかといえば、それはやはり睡眠です。

脳下垂体前葉は、睡眠中に2~3時間の間隔で成長ホルモンを分泌します。この間隔は長く寝たからといって変化しませんが、十分な睡眠を取れば取るほど分泌量は多くなるといえます。

とはいえ、あまり長時間寝すぎるのも良くありません。過度の長時間睡眠は、かえって体のバランスを崩したり、毎日の睡眠バランスを崩すもととなります。もちろん、睡眠不足もストレスやホルモンバランスを崩す原因になるため、適切な睡眠が重要です。

適度な睡眠時間は、ホルモンに限らず、様々な生命活動を考慮して考えられています。性別が関係することはほとんどありませんが、年齢別に適切な睡眠時間が提唱されており、一般的な成人の場合は7~8時間が望ましいといえます。

なお、いわゆるレジスタンストレーニングや強い負荷がかかった持久力運動など、高い強度を必要とする運動でも、血中の成長ホルモンの濃度が急増します。ただ、この場合の成長ホルモンの増加は、睡眠中と同程度です。

運動自体は、血流の改善とホルモンバランスの調整を促進し、病気に負けない体づくりも加わって、トータルで頭皮環境にも良い影響を与えるものです。しかし、成長ホルモンを促すからといって、かえって体を痛めるリスクのある高負荷の運動を行う必要はありません。

こうして見てきた通り、適度な睡眠時間を確保してしっかりと休むことは、成長ホルモンの分泌によって毛根にも作用が波及し、毛母細胞の分裂を通じた健全な毛髪の成長サイクルを取り戻すための最良の改善策としておすすめできます。