髪の毛とエンドルフィンの効果

エンドルフィンという物質が、髪の毛に直接作用するということはありません。エンドルフィンが薄毛や脱毛を抑制するとか、発毛・育毛に有効だという直接的な影響はありません。

ただ、エンドルフィンが大量に分泌される状態は、心身ともに好ましい効果をもたらし、全身の健康状態を良い方向にもたらしてくれることは間違いありません。

このため、エンドルフィンが体内で大量に作られる状況を作ることは、心地よい気持ちを伴った身体全体の改善につながり、これが頭皮環境にもより良い影響を与えるものと考えることができます。

ここでは、エンドルフィンやエンドルフィンが働く仕組みについて取り上げ、これが健康状態の改善を通じて髪の毛や頭皮にどう影響してくるのかを説明します。

エンドルフィンとは

エンドルフィンとは、脳内で作用する神経伝達物質です。神経伝達物質とは、刺激を受けてから反応を起こすまでの間で情報伝達を担う物質の総称です。

神経伝達物質と似た言葉に、「ホルモン」があります。ホルモンとは、それが合成や分泌されることによって、体内で特定の作用が促進される物質の総称です。

エンドルフィンは脳内の分泌によって情報伝達の作用を行うため、神経伝達物質でもあり、ホルモンでもあるといえます。

また、エンドルフィンはペプチドでもあります。ペプチドとは、いくつかのアミノ酸が結合してできた物質です。エンドルフィンは、神経伝達物質でもあり、ペプチドホルモンということができます。

なお、タンパク質という言葉も、アミノ酸が結合してできた物質の総称です。このうち、結合したアミノ酸の数が比較的少ない物質をペプチドという場合が一般的です。

エンドルフィンは、内在性オピオイドです。オピオイドとは、「オピウム(アヘン)類縁物質」という意味です。アヘンはケシの実から採取される物質ですが、「オピオイド」とはこれを加工した化合物や、体内に内在する化合物を含めた総称です。

オピオイドには、モルヒネ、ヘロイン、フェンタニル、メサドンなど、鎮痛、陶酔作用を持ち、いわゆる「麻薬」に該当するものが数多く含まれています。その一方、エンドルフィンのように、もともと体内に存在するオピオイドもあります。これが、「内在性オピオイド」です。

エンドルフィンの効果は強力

エンドルフィンは、内在性の鎮痛機能を持ち、多幸感をもたらすと考えられている物質です。このように脳内に自然に存在して、麻薬に似たような作用をもたらす物質を「脳内麻薬」といい、エンドルフィンはその代表例といえます。

エンドルフィンは、脳内の報酬系と言われる領域に幅広く存在しています。報酬系は人間など哺乳類の場合、ドーパミン神経系だと考えられています。

脳の報酬系とは、ある欲求が満たされたときや、満たされることがわかったときに、快感(快楽)の感情をもたらす神経系のことです。

報酬系の働きによって、仕事に対する対価を得たり、先生や親から褒められたり、家族や恋人の間で愛されてると感じたときに、それが実現される、あるいはそれが実現するとわかったときに、快感の感情がもたらされます。

このことで、短期的な欲求を我慢して仕事や勉強を頑張ったり、他の事柄よりも優先して報酬を得ようとすることができます。また、報酬とは逆に、給料がカットされたり、恋人に振られるといったことで不快な感情も生じます。

エンドルフィンのうち人間で見られるものは、α-エンドルフィン、β-エンドルフィン、γ-エンドルフィン、α-ネオエンドルフィン、β-ネオエンドルフィンの5種類です。特に体内で働くエンドルフィンとして、β-エンドルフィンが知られています。

エンドルフィンは、モルヒネのように非常に強力な作用を持った物質です。肉体的苦痛を受けたときに脳内で生成されるβ-エンドルフィンの鎮痛効果は、モルヒネの6.5倍と言われています。

エンドルフィンと全身への効果

先ほど触れた通り、エンドルフィンは鎮痛機能と多幸感をもたらす効果がある物質です。一般にエンドルフィンは、食欲、睡眠欲、生存欲、性欲などが満たされたときに分泌されることが分かっています。

また、β-エンドルフィンは、無感覚や鈍い痛みに対する鎮痛作用をもたらします。人間が負傷したとき、まだ傷が残っているのに痛みが鈍くなったり引いたりするのは、この作用のおかげです。

β-エンドルフィンは、表面痛をもたらす侵害刺激(皮膚や粘膜を傷害するような刺激)やストレスなどを受けたときに生成され、鎮痛・鎮静に働く作用を持つ一方、先ほどのドーパミン神経系において働きだすと、多幸感をもたらす作用を持っています。

このほか、β-エンドルフィンはストレスを受けたときに「かゆみ」を増幅する作用があることや、リトアニア出身でワシントン州立大学の神経科学者ヤーク・パンクセップ(Jaak Panksepp)によって、エンドルフィンは社会的安心感に関与することが発見されています。

また、マラソンなど、一定の苦しい状態を継続すると、やがて疲労や苦しさを通り越して、高揚して陶酔した気分になることがあります。これはランナーズ・ハイ、クライマーズ・ハイ、ワーカーズ・ハイなどと言われ、これもエンドルフィンの効果と考えられています。

当然ながら、髪の毛の生育や頭皮環境との関わりで最も重視されるべきエンドルフィンの役割は、多幸感をもたらすことです。これは脳の動きを活発にさせ、ストレスの低減や解消を通じたリラックス効果により、全身の調整能力の穏やかな改善が期待できます。

ホルモンバランスや全身的な体内活動の状態が、皮膚や毛髪に与える影響が少なくないことについて、当サイトでもさまざまなメカニズムを説明してきました。

エンドルフィンの役割を考えると、頭をよく働かせ、全身から整えていくには、食事、睡眠、人間関係、愛情などを整えていくことが非常に重要だといえます。