髪の毛の状態は体調のサイン

人間が摂取した栄養素は、生命の維持にとって欠かせない場所へ優先的に送られていきます。体内におけるさまざまな生命活動のうち、人体の生存にとって優先度の高い器官で使われていきます。

その一方、髪の毛というものは、そのほかの体内の器官や組織に比べて、決して優先度が高いとはいえません。髪の毛が生えなかったからといって、そのことが人の死の直接な原因になることはありませんし、生命の維持にとって重要度が高い部分ではありません。

このため、髪の毛の成長にとって必要な栄養素だからといってたくさん摂取しても、それが100%髪の毛のために使われるとは限りません。栄養分の多くは欠乏症も問題ですが、過剰な摂取も人体に好ましくない影響を与えます。

これとは逆に、人体になんらかの異常が生じているときに、その兆候が現れやすいのも髪の毛だといえます。すなわち、人体に変化が生じて生命活動に制約が生じたときに、やはり限られた栄養素などは重要度の高い場所に送られます。

このため、栄養素の欠乏やホルモンバランスの乱れといった人体の異常が生じた場合、早期から異常な変化が出やすいのが髪の毛だといえます。薄毛や脱毛が生じたときに、その人体のサインを見逃さず、なんらかの異常の兆候を感じ取って向き合うことが必要です。

ここでは、自分で出来る生活リズムの調整の重要性を取り上げます。

(髪の毛が抜け落ちるとともに、なにか不安に感じる方や、体調の不良を感じ取った場合は、医療機関に相談することをおすすめします)

メラトニンと体内時計

十分な睡眠によって成長と代謝に関与する成長ホルモンが大量に分泌されることは、成長ホルモンの発毛・育毛効果と睡眠で詳しく説明しました。これとは別に、メラトニンというホルモンが、体内時計(概日リズム)の調整に寄与しています。

「体内時計」とは、動植物や菌類など、ほとんどの生物が持っている24時間周期の生理現象のリズムです。体内時計は光、温度、食物など外部からの刺激によって修正されます。

これに対してメラトニンの分泌は、強い光を受けることで抑制され、暗くなると分泌量が増加します。メラトニンは脈拍、体温、血圧などを低下させることで、睡眠の準備が出来たと体が認識し、睡眠に向かわせる作用があります。

また、朝日や日中の光を浴び、規則的な生活を送ることで、メラトニンが分泌する時間や量が調整され、体内時計の修正を通じた体内リズムの調節が行われます。このため、不規則な生活や太陽光を浴びない生活はメラトニンの分泌がうまくいかず、不眠症・睡眠障害の原因となります。

このほかメラトニンは、強力な抗酸化物質として知られており、血液脳関門も容易に通り抜けることが出来て、体全体に行きわたる抗酸化物質だと言われています。特に、核DNAやミトコンドリアDNAを保護します。

ちなみに、メラトニンの分泌は性腺刺激ホルモンを抑制し、生殖腺の発達と機能を抑制する効果もあります(性腺抑制作用)。メラトニンの過剰な分泌は、月経を止める作用など生殖機能の退化も指摘されています。

とはいえ、メラトニンは十分な睡眠と規則的な生活を守ることで、適度な分泌を保つことが出来ますし、これによって正常な体内時計のリズムが機能され、睡眠をコントロールすることができます。

体内時計を整えることは、あらゆる栄養素の代謝活動や、ホルモンバランスを整えることの土台となる基本中の基本です。適切な睡眠と太陽光を浴びることは、毛髪に限らず、さまざまな生命活動の活力を取り戻すことにつながります。

ストレスと頭皮環境

ストレスがコルチゾールというホルモンを大量に分泌させ、人体に重大な影響を及ぼす可能性がある点については、身の回りで出来る薄毛対策で詳しく説明しています。

ストレスがコルチゾールの分泌を促すことで、脳の海馬という部分の神経細胞が破壊され、海馬が萎縮してしまいます。海馬は、脳の記憶や空間学習能力をつかさどる重要な部分です。

ストレスは、肉体的にも精神的にも非常に大きな影響を及ぼしますし、特に頭皮環境から悪い変化が出やすい原因の1つといえます。

ここまで見てきたように、睡眠不足や不規則な生活、ストレスなどが原因で体調が乱れたときに、そのサインが真っ先に出てくるのが髪の毛です。栄養素の欠乏やホルモンバランスの乱れは、まず髪の毛から影響を受けることがあります。

これは逆にいえば、頭皮を整え、健全な毛髪の成長のためには、全身的な取り組みが必要だということを意味しています。適切な睡眠を取り、ストレスを低減・解消することは、毛髪環境の改善にもつなげることができます。